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  1. 研究紀要
  2. 第101集

「待機状態の生活」─スペインにおける「同伴者のいない未成年移民」の生活の質に非正規滞在と正規性の追求が及ぼす影響─

https://doi.org/10.34356/0002000213
https://doi.org/10.34356/0002000213
6f34aab7-96e0-463d-9ad1-65daeeaedc3a
名前 / ファイル ライセンス アクション
「待機状態の生活」─スペインにおける「同伴者のいない未成年移民」の生活の質に非正規滞在と正規性の追求が及ぼす影響─.pdf 「待機状態の生活」─スペインにおける「同伴者のいない未成年移民」の生活の質に非正規滞在と正規性の追求が及ぼす影響─.pdf (1 MB)
Item type 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1)
公開日 2025-03-17
タイトル
タイトル 「待機状態の生活」─スペインにおける「同伴者のいない未成年移民」の生活の質に非正規滞在と正規性の追求が及ぼす影響─
言語 ja
言語
言語 jpn
キーワード
主題 同伴者のいない未成年移民(UAM)
キーワード
主題 子どもの移民
キーワード
主題 非正規滞在
キーワード
主題 スペイン
キーワード
主題 収容施設
資源タイプ
資源タイプ識別子 http://purl.org/coar/resource_type/c_6501
資源タイプ departmental bulletin paper
ID登録
ID登録 10.34356/0002000213
ID登録タイプ JaLC
別タイトル
その他のタイトル “A Life on Standby”: The Effects of Irregular Status and the Pursuit of Regularity on the Quality of Life of Unaccompanied Minors in Spain
著者 ザカリア・サジール/ラファエル・ルイス・アンドレス/ ヨアン・モリネロ・ジェルボー 著

× ザカリア・サジール/ラファエル・ルイス・アンドレス/ ヨアン・モリネロ・ジェルボー 著

ザカリア・サジール/ラファエル・ルイス・アンドレス/ ヨアン・モリネロ・ジェルボー 著

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上野,貴彦 訳

× 上野,貴彦 訳

上野,貴彦 訳

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石灘,早紀 訳

× 石灘,早紀 訳

石灘,早紀 訳

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著者別名
姓名 SAJIR Zakaria, RUIZ-ANDRÉS Rafael ,MOLINERO-GERBEAU Yoan
著者別名
姓名 UENO,Takahiko
著者別名
姓名 ISHINADA,Saki
抄録
内容記述タイプ Abstract
内容記述 要旨
 本稿はスペインの事例を用いて、同伴者のいない未成年移民(Unaccompagnied Minors:UAM)の非正規滞在と、かれらの生活の質との相互関係について論じる。具体的には、リェイダ県(カタルーニャ州)のサン・ジュアン・ダ・デウ・テラス・ダ・リェイダ移民収容施設で行った質的調査(UAM と12 回、スペイン人および未成年移民との2 回のフォーカスグループ・インタビュー、社会教育者や心理学者といった主要な関係者との9回の詳細なインタビュー)にもとづき、未成年移民の法的地位と社会的状況が、かれらの将来への期待と受け入れ社会への統合にどのように直接の影響を及ぼすかを分析した。かれらは、正規滞在に向けた過程として収容施設に滞在する過程で、希望や夢が無期限に先延ばしにされる「待機状態」の生活を送る。そのことが、スペイン人の同世代の若者との間の亀裂を生み、結果的に、より良い生活を求めて移住したはずの未成年移民の生活の質に、短期的にも長期的にも悪影響を及ぼしていることが明らかになった。

訳者解題
 本稿と著者の概要
 本稿は、ルーマニアの「生活の質研究所(Institutul de Cercetare a Calității Vieții,ICCV)」が刊行する学術誌『生活の質(Calitatea Vieții)』に掲載された論文[Sajir,Zakaria., Rafael-Ruiz, Andrés., and Molinero-Gerbeau, Yoan. 2022. “A Life on Standby”:The Effects of Irregular Status and the Pursuit of Regularity on the Quality of Life of Unaccompanied Minors in Spain. Calitatea Vieții, 33(2), 126-146. https://doi.org/10.46841/RCV.2022.02.04]の日本語訳である(日本語タイトルは訳者による)。
 本稿の著者3 名のうち、ザカリア・サジール氏とヨアン・モリネロ・ジェルボー氏の研究に関しては、以前に訳者(上野)が日本語訳した2つの論文の訳者解説を参照されたい(Molinero-Gerbeau 2019=2023; Sajir, Molinero-Gerbeau and Avallone 2022=2024)。ラファエル・ルイス・アンドレス氏は、マドリード・コンプルテンセ大学宗教科学研究所の研究員で、20 世紀後半以降のスペイン社会における世俗化のあり方などについての歴史社会学的研究を展開するとともに、宗教間対話に関する複数の研究プロジェクトに加わってきた。本稿のほかにも、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下にスペインのインターネット空間で広がった、イスラム教嫌悪と結びついたデマを質的に分析し、17 類型に整理した論考を、ザカリア・サジール氏とともに発表している(Andrés and Sajir 2023、スペインにおけるコロナ禍と移住者に関して、上野 2020a; Sajir et al. 2022=2024も参照)。
 
南欧社会と「同伴者のいない未成年移民」
 本稿が注目するのは、とりわけ20 世紀末以降、紛争や暴力、貧困などを逃れて移動する人々のなかでも特に脆弱な立場に置かれた存在として世界的に注目されるようになった、保護者や家族を伴わない移住者としての、「同伴者のいない未成年移民(Unaccompagnied Minors: UAM)」である。それまで未成年者は、独自の意思で自発的に国境を越えることの難しい「移動性の落伍者」とみなされがちであり、出生国から脱出する例外的な手段としての国際養子縁組制度にかんする研究や政策論議の蓄積とは対照的に、(グローバル・サウスの難民キャンプには多くの単身未成年者がいるにもかかわらず)かれらの単身越境は等閑に付されてきた(cf. 柄谷 2016: 第4 章)。ところが1990 年代以降、子どもの権利条約の国連採択(1989 年)と締結国の増加を一つの契機に、子どもの基本的人権を国際的に保障する機運が高まった。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が1993 年に定めた子どもの難民に関する行動指針(EC/SCP/82)においても、難民のなかでも、とりわけ同伴者のいない未成年者に特別の保護とケアを提供する必要があることが強調されている。また同時期には、冷戦体制の崩壊を背景とするユーゴスラヴィアやアルバニアにおける混乱のなか、単身でイタリアやギリシャなどを目指す未成年移民の存在が顕在化した。かれらは極めて脆弱な立場に置かれるなかで、組織犯罪に巻き込まれ、またそれに加担するリスクを抱える可能性が他の移住者より高いとされるだけでなく、主流社会がかれらを「犯罪者」としてスティグマ化することが更なる排除につながり、生活と法的地位の安定化がより困難になる悪循環に陥る場合が多い(Plan 2023 のほか、ギリシャの事例に関してPapadopoulos 2023 を参照)。訳者(上野)のバルセロナ郊外における調査においても、脆弱な立場に置かれた移住者を対象とする社会教育が、1990 年代に本格化したUAM への支援を通じて制度化したことが明らかになっている(上野 2020b: 72)。
 UAM の存在は1990 年代から局地的には知られてきたが、地中海国境の管理厳格化がすすんだ2000 年代、逆説的にも、よりよい生活を求めて出生国から欧州をめざすUAMの数が増加した。そのなかで、「優先的な庇護対象」となる未成年者でありながら、「望まれない移民」にも位置付けられがちなかれらをめぐる社会的な葛藤が表面化するようになった。特に2010 年代以降、スペインのみならずイタリアやフランスでも、UAM の処遇が移民政策をめぐる一大争点となるのみならず(芦田 2024; 奈良 2024)、ルイ= ジュリアン・プティ監督『ウィ、シェフ!』やダルデンヌ兄弟監督『トリとロキタ』(ともに2022年公開)のような映画作品の題材にも取り上げられるようになってきた。スペインに関していえば、前近代からの歴史的記憶や近代の植民地戦争などの複合要因を通じて形成されてきた、イスラム教徒やアフリカ出身者、とりわけ「モロッコ人」に対する排外主義的な言説を、2010 年代に入ってから伸長してきた極右政治勢力が利用するなかで(cf. 池北2019)、かれらと深く関連したネガティブな象徴的存在としてのUAM が最大の攻撃対象とされ、そうした状況はコロナ禍において深刻化した。なお、地中海国境としばしば比較される米墨国境においても、エルサルバドルなど中米諸国から米国を目指す未成年単身移民の数が2010 年代以降に増加し、またそのことが移民・国境政策をめぐる米国内の論争のなかで政治化されている(Galli 2023)。
 グローバルな課題のひとつとなったUAM 受け入れに関して、スペインの国家と地方政府の事例は一方において、UAM を主対象とする移民法改正を実施するなど、新たな包摂のモデルを積極的に模索している点で興味深い。スペインの事例は他方で、UAM に対する包摂と排除のあり方を構造的に規定する、スペイン国民国家の形成に関わる歴史的諸問題や、欧州統合の矛盾をも浮き彫りにする。例えば、多くのUAM の移住経験と関係する、アフリカ大陸に保有する飛び地(セウタとメリリャ)を含む地中海沿岸地域における国境管理のポリティクスが必然的に生み出す移住・滞在の非正規性(cf. 石灘 2022; 2024)は、スペインの欧州統合過程への合流と、シェンゲン条約に象徴される欧州域内自由移動の確立の複雑な連関が生み出してきたものである(小井土 2017; Abril and Spottorno2017=2019)。また、各自治州間での未成年者保護に関する政策枠組みの不一致も、欧州共通通貨であるユーロの導入に向けた財政規律化や地域(リージョン)主体の経済進行政策と連動しつつ、中道右派アスナール政権下で始まった1990 年代後半からの分権改革とともに顕在化した現象である(永田 2016; 2019)。
 こうしたアンビバレントな状況下で、非正規移民としてのUAM にとって、正規化は依然として大きなハードルでありつづける。その困難がもたらす「待機状態の生活」が、同年代の若者との比較のなかでの相対的剥奪を深刻化しうることを事例研究を通じて示唆した点は、本論の大きな成果であるといえる。

 本稿の成果と課題──送り出し国モロッコの視点から
 上述のように、スペインをはじめとする南欧諸国において最も論争的なテーマのひとつとなったUAM の受け入れについて、事例研究にもとづくミクロレベルから問題提起を行う本稿には高い参照価値が認められる。それでもあえて本稿の限界を指摘するならば、UAM を送り出す、地中海の南側に位置する地域における若者を取り巻く状況についての考察が不足している点が挙げられる。そこでここでは、スペインにおけるUAM の受け入れ問題と不可分な、モロッコをめぐる状況について補足する。
 本稿で論じられているスペインのUAM は、中東・北アフリカやサハラ以南アフリカ諸国など多様性があるものの、国籍として最も多いのはモロッコである。モロッコは歴史的に、旧宗主国であるフランスやスペインを中心に正規/非正規に移民を送り出していたが、1990 年代にモロッコ人UAM の問題が顕在化した(Khachani 2010)。この背景として挙げられるのは、スペインと近接しているという地理的要因はもちろんのこと、貧しい家庭環境やそれに伴う就学率の低さなど、モロッコにおける地域間格差や社会階級の差といった社会的要因であった(Lahrech 2022)。
 スペインは2018 年に、UAM の入国数の大幅な増加を経験する。本稿の調査が行われたカタルーニャ州でも、同年のUAM の入国数の8 割近くをモロッコ人が占めていた。2018 年は、前年にリビア・イタリア間で非正規移民に関する合意が締結されたことを受け、モロッコ・スペインを経由する地中海西ルートでの人の移動が増加した年でもある。モロッコでは、ヒラク・リーフ運動に対する政治的弾圧(政治の腐敗や独裁に対してデモを行っていた指導者が逮捕され、20 年の実刑判決が言い渡された)が起こった2017 年ごろを境に、若者を含むモロッコ人が泳いでスペインの飛び地を目指そうとする試みが増加した。こうした若者のなかには、未成年者も含まれている(Lemaizi 2019; AssociationMarocaine des Droits Humains 2023)。
 モロッコでは、幼いころから移住を検討する子どもがいる傾向がある(Khachani 2010)。経済的理由や教育機会といった動機のもと多くのモロッコ人が「たとえ必要な書類を持っていなくても」移住することを検討しているなか(Arab Barometer 2024)、未成年者の移民数も増加している。スペインにおけるUAM の受入数は、あくまで越境それ自体に「成功」した未成年者の人数であり、その過程で命を落としたり、行方不明になったりした子どもも少なくない。
 UAM の移住に関して特徴的なのが、SNS の影響である。動画共有アプリのTikTok などのSNS では、越境の過程やスペインでの生活など、すでにスペインに渡ったモロッコ人の「成功」が動画で共有されている。SNS で可視化された「成功」はほかの子どもにとってのプル要因にもなり、こうした「成功」を夢見て、自ら移住を志向しUAM となる子どももいる(Zoubeidi 2023; El Kanabi 2024)。また、スペインにおいて未成年者に対する配慮があり、正規化の道も開かれていることが、子どもに移住を志向させる要因となっているとの指摘もある(Khettou 2024)。本稿で指摘されているように、モロッコを出発するUAM は、社会・経済的な停滞や政治的な問題を抱える自国を離れ、正規化の可能性もあるスペインで、より良い生活を送るという希望を抱いているのである。
 欧州における移民受け入れの「危機」をめぐる言説は日本においても頻繁に紹介されているが、本稿のような実証研究の成果や、ここで補足したような広域的かつ越境的な諸要因は考慮されていない場合がほとんどである。これらを踏まえた、人の移動や人権保障に関連したグローバル・イシューの、より精緻な分析が求められているといえる。
出版者
出版者 都留文科大学
bibliographic_information 都留文科大学研究紀要

号 101, p. 235-258, 発行日 2025-03-01
ISSN
収録物識別子タイプ ISSN
収録物識別子 0286-3774
NCID
収録物識別子タイプ NCID
収録物識別子 AN00149431
著者版フラグ
出版タイプ VoR
出版タイプResource http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85
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Ver.1 2025-03-17 07:55:16.138239
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